

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加問題で与党内が混乱している。もはや世界に恥の上塗りをさらす民主党にはつける薬はない。戦後60年以上、世界貿易の恩恵をこれほどまで享受しておきながら、時には結果的に輸出先の国の雇用を奪いながら世界第2位のGDPを誇るまでいたった貿易立国のはずである。この問題の行き着くところは、もはやボーダレスの競争社会であることから逃避できないことを自覚するか、しないかである。
これからの日本人は見たこともない中国人やインド人、欧米人と経済的に競争していかなければ生きていけないのである。インドの山奥で作られた製品と日本のクリ−ンル−ムでつくられた製品とが同じショ−ケ−スに並ぶのである。どっちが先に売れていくのかは解らない。ただこの世に生を受ける以上、生存競争の相手は地球上に無数に存在することになる。
TPPへの参加は、工業製品業界は大歓迎、農業団体は猛反対という簡単な図が書ける。この図に民主党の先生方が生存権をかけて乗っかる構図になっている。各業界団体の泣き言を代弁するのだから、まさしく代議士としては立派なものだが、その行動様式のあまりの低レベルさには閉口してしまう。
TPPに参加する上で、日本が必ず担保しなくてはならない重要課題がある。それは為替問題である。特に円・ドル相場であるが、TPPの最大交渉先はアメリカである。アメリカにとっては日本である。この2カ国でTPP参加予定国のGDPの9割を占めるわけである。
今の日本では、TPPにより関税が撤廃されれば日本の工業製品の競争力が増すと単純に考える向きが大多数だ。だがよく考えて欲しい。関税が撤廃されて競争力のない製品を作っていた国が失業問題で窮した時に、取る政策は何か?。それは自国通貨安政策にほかならない。どこかで見てきた構図である。プラザ合意以降の日米経済間に起きてきたことだと気付かなければならない。結局、TPPにより関税を撤廃しても、為替相場への影響力を握る大国が世界貿易を調整可能とするハンドルを握るシステムに乗せられるに等しいのだ。
もはや日本にそのハンドルを動かす経済力は無い。
だからこそTPPへの交渉は、アメリカのドル安誘導政策が継続する以上、日本はプラグマティックに行動すべきなのである。低レベルの政治家は国益にそぐわなければ撤退もあり得るというが、正確には「アメリカのドル安誘導が継続するならば参加の意味はない」と主張すべきなのである。(dfb)

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